住宅の構造設計の試み [住宅]
住宅の構造設計は、いわゆる決まった方法で、誰もがやっても、行う計算方法は同じ。
ちょっと違うのが、設計者による配慮で、これは経験と勘もあり、「配慮」という言葉で表現されると思う。
例えば、構造設計しても、設計者によって答えも違うし、具体的に言えば、どこぞの耐震壁を厚くし、割増した。とか、分散し、意匠性も確保したとかそんなことになるかと思う。
筋交いの方向とか、向き 取り付け方法とかも同じで、住宅においては、耐震壁が主役となる。
しかし、構造計算までおこなっている住宅ともなれば、より個性が失われることもある。
どうしても、耐震壁にも「量」が必要となり、4号建築物という法的区分けにより、構造計算までしない 住宅だったとすると、そこまでいらない場合も多い。
さて、最近、許容応力度計算とN値計算を同条件で比較するシーンがあったので、結果を言うと、やはりN値計算よりも、一段階上となる傾向だと分かった。
例えば、N値計算では、15KNのホールダウンだったのが、20KNになってしまうとかである。
N値計算は、昔はなかったので、家の四隅に15KNとか20KNのホールダウン金物を設置しておしまいとかもあったはずだ。しかし、このN値計算をすることにより、より詳細に必要箇所を計算できるようになったのだが、許容応力度計算と大きく違うといえば、そのくらいで、必要箇所にあるのはそんなに変わらなかった。N値計算なのか、許容応力度計算なのかの選択は意匠設計者の判断もあるが、過度の設計と見るかは、考え次第 ということになる。
普通の住宅 いわゆる4号建築物で、ただの仕様規定での軸組計算による耐力壁算定の住宅を、許容応力度計算したことがある。しかし、結果はもちろんNGであり、4号ではとても、構造計算に耐えられないと分かった。そもそも、構造計算していないと、裁判をした場合「負ける」というのが判例にもかかわらず、4号で十分 という考えは、この結果からだと余計にまずいと思うのは、自分だけではないはずだ。少なくとも、工学的根拠が担保されているのとされていないのでは大きな差がある。
さて、そんな根拠を作ることはもちろん必要であるが、日経アーキテクチュアの最新号で、「家具を使った耐震」の事例があった。
図面を見ると、縦方向 いわゆるY方向 の耐力壁が一見見当たらない。
真ん中の家具の裏壁が、耐震要素となっているのは明白だが、少し開口が多すぎる感がある。
おそらく、家具の裏壁の耐震壁の耐力倍率が、7倍要素で、考えているのだろう。合わせて、住宅自体の重量も軽い事も考えられ、それで成り立たせているという印象だ。
人と違う意匠性をもたせ かつ 構造的に問題ないものをつくることは、デザインする側からすれば、相反するものに近く、課題であるが、考え一つというところなのだと思う。
当方も、 1階がほとんどななめ壁の2階建ての構造設計を行ったが、この事例よりも、正直、計算が難しかったと考えている。
とはいえ、意匠性がなければ、施主も満足しないし、まして、耐震性もなければ満足しないのが現在。
当方もチャレンジ精神を失わず、技術向上とデザイン性の向上を目指したい。
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